【2017年09月刊】駐在員を教育するぐらいなら現地社員を教育せよ?
今年は中国在住十年クラスの皆さんの「完全帰国」を見送ったり聞いたりする機会が多いです。理由はそれぞれですが、未知のフロンティア、好奇心を刺激される混沌といった時代が終わったことが根底にあるのかな、という気がします。社会が成熟して落ち着いていくのは、その街で暮らす庶民にとって望ましいことですが、既存秩序に縛られない環境や、国を挙げて豊かになろう!という活力に惹かれた人にとっては、現地の最前線に居続ける理由が薄らいでいくのかもしれません。
同様に、中国の日系企業の様子も、徐々に変化している気がします。最近、駐在員の方や、駐在経験者の方と話をしていると、「駐在員の役割もだんだん変化してきてねぇ。設立期や問題が頻発していた時期は、現地へ課題解決に来るっていう感じだったけど、いまは、日本本社の方も本社のために現地で仕事させるっていう感覚が強くなってる。だから、駐在員のレベルアップのために何かしなければって意識は薄くなってきているよね」と言われることが増えました。私も同じ感覚を持っています。
そして、これについては危機感を持っています。なぜなら、現在まさに起きつつあるのが、「組織管理における日本人駐在員のボトルネック化」だからです。などと書くと「また、小島が極端なことを言いはじめた」と思われますが(笑)、これは私が言いはじめたことではなく、私が敬意を持つ中国の仕事人たちから相談を受けるようになり、具体的な話が重なったため、認識したことです。
では、本当に駐在員がネックとなるようなことが起きているのか。具体的な例を挙げてみましょう。
本当に駐在員が管理のネックになっているのか
□ノーチェック承認
調達で長年にわたる不正が発覚。責任を取らせたいと来社相談。
小島「本人は独断で発注先を決めて購入していたんですか」
経営者「稟議は上げていた。相見積の情報も一応あった。毎月の発注時も最終承認は形式上、総経理まで上がる」
小島「稟議書などの内容に明白な虚偽や偽造はあったんですか」
経営者「相見積の相手は怪しいかなと疑っているが、もう昔のことだし、少なくとも証拠はない」
小島「誰が押印やサインをしたんですか」
経営者「調達の部長、工場長、総経理……。いちいち個々の書類までチェックできんから、こっちもポンポーンと押すわな」
小島「この情況だと、責任を追及することは可能ですが、処罰するなら総経理や部長も処罰の対象になっちゃいます。稟議に基づき長年承認してきた以上、 間接的な管理監督責任だけで済まない責任を負っていますから、担当者だけ懲戒処分にしたりするのは、筋が通せません。しかし、いくら忙しいとは言え、高額な部材を市価の十倍で何年も取引させ続けてきたというのは、やはり痛いです」
経営者「……」
□管理者の超超重役出勤
監督者研修でのひとコマ。
小島「いま、現場でどんなことに困っていますか?」。
係長「課長が捕まらない。現場でトラブルが起きた際、課長がどこを探しても捕まらないので携帯に電話すると、いつも会社にいない。相談や報告ができないので困っている。その上の日本人部長は現場の情況を把握していないので、相談しても意味がない。」
小島「課長は、なぜそんなに社内にいないの?」
係長「ウチの場合、課長以上は残業代不支給で、その代わり出退勤は打刻管理しない。だから課長以上はみんな定時に出社なんてしないし、出勤していなくても会社も何も言わない。だからどうしようもない」
小島「……」
二つ程度の例では説得力がありませんので、次回も続けましょう。
2017.09 Jin誌