【2017年10月刊】駐在員を教育するぐらいなら現地社員を教育せよ? 2

国慶節休暇が明けると、中国の今年度は最終コーナーを回ったところ。今年の追い込みと来年の仕込みの時期に入っていきます。仕込むなら、ぜひ駐在員のリーダーシップ、マネジメント、コミュニケーションについて、何らかの強化・支援施策を考えてくださいね。
前回は、「組織管理において日本人駐在員がボトルネック化」しているのでは、と問題提起し、本当にそんなことがあるのか、具体的な例を二つ挙げたところでした。

□ノーチェック承認
□管理者の超超重役出勤

では三つ目から進めましょう。

□業務リスクに無防備

現地部長さんからの相談。

部長「環境問題対策で、一年ほど前から当局の指摘を受けていた。対応は関連部署の管理者に任せていたところ、ある日突然、『罰金100万元および問題設備の即時使用停止を要求された』と社内報告が上がってきて、経営陣が愕然とした」

小島「当局の態度が突然変化したんですか」

部長「いや、どうも担当部署の管理者が過去の経験から事態を軽視していて、『対策中です』などとお茶を濁していれば大丈夫と高をくくっていたらしい。それで当局が、舐めた態度を取るなら、こちらも相応の対応をしようじゃないか、と態度を硬化させたみたい」

小島「上司は事態を把握していなかったんですか」

部長「ウチの日本人駐在員たちは、実務をほとんど把握できていない。部下が『問題ない』と答えたり、報告を上げなかったりすれば、問題が悪化して爆発するまで見逃されてしまう」

□優しさと甘さを混同

会員企業さんとの定期面談で。

経営者「最近、人事課長が腹を立てちゃってね」

小島「どうしたんですか」

経営者「品質部の日本人部長が人事にやってきて、『部下の女性管理者が休暇日数を使い切ってしまったが、家庭の事情もあるので延長を認めてほしいと言っている。真面目な社員だし何とかならんか』と言ったらしい」

小島「あの人事課長さんなら、そんな特例は認めませんよね」

経営者「そう。で、会社にはルールがあって、個別事情で特例を認めていたら他の社員に不公平だし、特に管理者はルール遵守を指導する側の立場なんだから、人事としては対応できません、って言ったらしいの」

小島「ど正論ですね。それは部長も反論できないでしょう」

経営者「そうしたら、日本人部長が、『ルール、ルールって、少しぐらい柔軟に認めてもいいだろう。お前ら人事は冷たいな』と人事を批判したらしい」

小島「自分の行為が全社にどんな影響を与えるか、まったく分かっていませんね……」

他にも、

□問題部下を叱れない。
□指導も教育もせず、いきなり人事部署に「解雇して」と投げる。
□優秀な部下だから特例で昇格対象者に入れてくれと経営者や人事にねじ込む。
□人事評価の面談で部下の反発を受けると説明も指導もできない。
□部下から評価結果に異議を唱えられると、結果を調整してしまう。
□問題部下たちに取り込まれ、使われてしまう(不正への荷担、不正の見逃しなど)

といった「実例」があります。まだまだ挙げられますが、もう充分でしょう。

共通するのは、「自分の立場・役割を分かっていない、果たせない」ことと「自分の行為が、会社全体にどのように深刻な悪影響を与えるか理解していない」こと。このまま放置すると、組織管理のレベルは目を覆いたくなるほど落ちていきます。現地社員教育の前に、駐在員の管理力を正常なレベルまで引き上げる方が急務です。

2017.10 Jin誌

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