【2018年01月刊】駐在員を教育するぐらいなら現地社員を教育せよ? 5

年末に、LINEが中国のシェアバイク最大手・Mobikeと資本業務提携して日本市場に参入すると報道されました。まだ面で自転車を配置できるかという中国とは異なるハードルが存在しますが、決済を含めたソフト面の整備は進んでいる感じですね。

ちょうど私も、この報道が流れた頃に上海でMobikeデビューを果たしてきました。上海オフィスを新設するための滞在でしたが、弊社の張晨(現天津オフィスは彼がプロジェクトリーダーとなって仕上げました)と一緒に二日間で二十五物件を回る過密スケジュール。タクシーを使ったりしたら無理ですから、シェアバイクにデビューする絶好の(それしか選択肢がない)機会となりました。

半年以上も前にMobike登録しながら、「サドルが低すぎたら乗りにくいし」とか「使い方が荒くて壊れかけていたら嫌だし」などと敬遠する理由を並べ立てていた私ですが、一度使ったら手放せなくなりますね。とくに「平地」で「渋滞が慢性化している」都市では非常に便利だと思いました(このあたりも日本で定着できるか微妙なところかも)。
お陰で納得できるオフィスが確保できましたし、運動不足解消にもなって、いいデビューを飾ることができました。日本で受け入れられるのかどうか、引き続き見守りたいと思います。

さて、「組織管理において日本人駐在員がボトルネック化」してきている、それは従来よりも駐在員による組織管理の難度が上がっているためだ、という話から、管理難度が上がっている要因を挙げているところでした。今回は三つ目「中国から見た日本」です。

要因③ 中国から見た日本

2000年代前半、弊社は前身にあたる合弁会社の時代でした。当時、中方投資者の一つが主力事業にしていたのが、日本への「研修生 (外国人研修生・技能実習生)事業」です。ほとんど研修生一本で成功して、ずいぶん繁盛していたのが印象に残っています。研修生や技能実習生は、建前が研修や技能実習の立場ですから、日本で得られる手当や収入は決して高いものではなく、仕事もハードなものが多かったはずですが、希望者が列を成す時代でした。

さらに前の時代、日系製造業では、研修生に選ばれて日本へ行くことが大きな栄誉であり、いまでも当時のことを懐かしむベテラン社員さんから思い出話を伺うことがあります。政治や歴史の面ではいろいろな感情が交錯するものの、当時の中国の皆さんにとって、パナソニックやソニーは憧れのブランドであり、日本の技術や品質は敬意を持つ対象でした。

同様に、日系企業に勤めることもひとつのステータスであり、日本本社は霞の先にある大本社のようなイメージだったのです。

日本との距離が変わり
見方も変わった

ところが、2014年ごろから情況は大きく変化します。背景にあるのは、豊かになり海外旅行がブームになった中国人、LCC(格安航空会社)の隆盛、日中関係の安定など。「爆買い」という流行語にもなった中国旅行客の激増です。一部の日本通だけでなく、日系企業の社員が家族を連れてごく気軽に日本を訪れる時代になりました。
これにより、中国人(ここで言う中国人とは、日系企業の社員や家族・友人知人といった人たち)から見た日本との距離は劇的に近くなりました。そして身近になった結果、日本の良い面も悪い面も含めて実像を知ることになり、もはや憧れたり、敬意を抱いたりする対象ではなくなりました。駐在員にとっては、「日本本社からの駐在員」というだけで履いていた下駄が消滅してしまったのです。

「経験の交差」と同様、中国社員からの見方が変わっているのに、日本人駐在員側の感覚が変わらないと、ズレが生じ、痛い結果を生んでしまいます。

2018.01 Jin誌

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