【2018年04月刊】駐在員を教育するぐらいなら現地社員を教育せよ?8
日本では例年より早めに桜のシーズンがやってきました(これを書いているのは3月中旬の終わり)。今年の日本は春が来るのが遅いと思っていたら急に暖かくなり、梅の季節が短くて、すぐ桜が咲き始めました。残念ながら入学式までは持たなそうですね。
今年の桜シーズン、日本でニュースになっているのは、「花見を目当てにやってくる中国観光客の多さ」だそうです。全国的に有名なスポットはもちろん、地元でしか知られていないような場所まで訪れる人が増えているのだとか。こういった体験も「中国から見た日本像の変化」を加速させていく要素になると思います(いや、私の実体験で言ったって、新生児をあやすのに世話になっている玩具は中国の口コミで知りました。ドラッグストアや化粧品店で頼まれる指名買い品のほとんどは知らなかったもの。でもネットで調べるとちゃんと日本でも評価されているんですよねぇ。食事処、インスタ映えしそうな場所、サービスエリアの定番土産品……どれも中国の皆さんに聞いた方が詳しいと思います。さらに脱線すると、ウチのスタッフなど最近は事前告知さえせず、日本のアマゾンで買い物をして、送り先をウチにして、勝手に送ってきますから。まったく。まぁそれを見て、最近の売れ筋や流行りをチェックさせてもらっているわけですが:笑)。
ところで、皆さんはこの十年、何度ぐらい花見に出かけました? 新しいスポットに出かけてみたことはありますか(私はほとんど行っていません……)。もしかすると、最近の日本の流行やホットなスポットなどは、周りの中国社員たちの方が詳しいかもしれませんよ。だとしたら、我々が「日本では○△×なんだ」などとしたり顔で言い続けるのは、これから自爆行為になる恐れだってあります。周りの人たちは「この人、まだこんなこと言ってるんだ」なんて冷ややかに見ながら、「この人の言う『日本』って、たぶん十年以上前の話だよな。仕事でも旧態依然とした発想や方法を押しつけているんじゃないか」と底を見透かし、指示や指導をまともに聞かなくなるかもしれませんから。
日本のことは日本人がいちばんよく分かっている、という思い込みは、そろそろ気をつけた方がよさそうです。私自身も含めて。
さて本稿は、「駐在員は本社の出先なんだから、教育するなら現地幹部を」という風潮に異議を唱えて、「いまこそ駐在員の教育・支援が必要。内外の経営環境の変化を受け、マネジメントの要である駐在員の役割は重要性を増している。でも逆に、駐在員がマネジメントのネックになりかねない情況にある。なぜなら、駐在員という仕事の難度が、従来よりも大きく上がっているから」と主張を広げてきました。
●駐在難度が上がっている原因
□高成長時代が終わった
□駐在者と現地社員の経験の交差
□中国から見た日本像の変化
□法律・政策の変化
ここまで書くと、次に考えなければならないのは、「じゃ、難度が上がっている駐在員の仕事にどう対応すりゃいいんだ」、「駐在員の教育・支援って具体的には何だ」ということですね。
駐在員の仕事は現地社員の応援
駐在員の任務や仕事っていろいろあります。ただ、「自分は数年で帰任する」とか「自分一人で動かせない仕事がたくさんある」ことを考えると、やはり主役は現地社員にして、彼らにどう活躍してもらうかを考える必要があると思うんですよね。駐在員は彼らの応援役。仮に自分の代で超人的活躍によってリーダー兼担当者として凄い成果を残せても、たぶん次の代で崩壊する。短任期でつなぐ以上、バトンを確実に渡すところまで責任範囲にしておかないといけませんよね。次号で続けます。
2018.04 Jin誌