【2008年12月刊】2008年の総括と課題対策のポイント

2008.12 Whenever天津誌 掲載

いつの間にか本年最終号となりました。振り返ると、労働契約法と南方の大雪で幕が開き、労働仲裁法(労動争議調解仲裁法)と四川の大地震で春が過ぎ、北京五輪と労働紛争で夏の熱気が頂点に達し、国際金融危機と労働関連の細則類で秋を飛び越えて一気に冷え込んだ一年でした。

まさに「激動」と呼ぶにふさわしい経営環境の変化です。敬仰する経営者は「乱世」と表現していました。こんな本年を総括するようにと何人かの方から声が掛かりましたので、人事労務の観点から振り返ってみたいと思います。

労働法制の面から2008年をひと言で表すと「新しいルールがほぼ出揃った一年」と言えます。新ルールには、注目を集める有給休暇の提供・買取義務化などもありますが、経営管理への影響度から見て重要なポイントを五点に絞ります。

2008年 法制面の大きな変化

  • 無固定期限契約の強制条件増加
  • 社内規定は導入手順まで要求
  • 社員の労働仲裁の容易化・促進
  • 工会設立と集団協約の促進
  • 派遣利用メリットの縮小化

これらがどんな意味を持つか、整理してみましょう。

(1)契約解除のハードルが上がった

最大の影響は、何と言っても辞めさせるべき社員を辞めさせるための難易度が上がった点です。

これまでは、「懲戒解雇となると大げさなので、円満に退職させたい」と考える場合、労働契約期間の満了を待つという方法がありました。一年間契約を繰り返し更新する雇用形態が一般的だったため、最長で一年間待てば、理由や情況に関わらず対処できました。

ところが、今回のルール変更により、この方法は一度しか使えないことになりました(企業有利の解釈でも最大二度)。立法に雇用の安定化という意義があるのはもちろんですが、特に日系企業にとっては厳しいルールだと思います。

なぜなら日系企業の特性上、「解雇が非常に苦手であり、下手だから」です。もうダントツに苦手です。経営への影響度×日系企業の苦手度が負の相乗効果を発揮しかねませんので、この問題はしっかり対策を立てる必要があります。

【対策ポイント】

  • 採用戦略・思想を根本から見直す
  • 就業規則の精度を上げ運用厳格化
  • 現地に即した評価制度の確立

要は、入口で峻別する(採らない)、緩いザル管理をやめる(見逃さない)、駄目な人には明確に会社の評価を示す(自分で進退を決めなさい)……ということです。

(2)労働仲裁が増加し事前に決着化

今年は各地で少なくとも労働仲裁の案件数が倍増し、多いところでは五倍増という情況です。天津のあるエリアは開廷まで四か月以上の待ちです。

過去の号でも書いたことがありますが、労働仲裁で企業側が負ける(主張が認められない)割合は85%を越えています。今年からはさらに、受け身で仲裁に入った時点で会社の負けはほぼ確定的となりました。会社が主張を認められるためには、仲裁のポイントを理解し、日常から手を打っておくしかありません。

【対策ポイント】

  • 就業規則の精度を上げる
  • 導入手順に注意し、記録を残す
  • 書面警告をきっちり出す

これらがポイントになります。必要なのは緻密さと周到さ、そして処分を曖昧に終わらせない厳格さです。この分野の支援の経験上、的確な対策を取っていると、仲裁への提訴自体が減少します。

(3)労使協議制の強制化が進行中

労働契約法を読むと、労使協議制の推進に対する当局の強い意思を感じます。工会の設立促進、給与の集団協議・協約の義務化などは、労働契約法で示された道筋を歩ませるためのステップです。

まず、この大きな流れを理解する必要があります。個々の法規・政策を見ていると大局を見失います。労使協議制の推進は、中期的には不可避と捉えた上で、短期・中期の対策を考える必要があります。

【対策ポイント】

  • 法・政策の内容を社員より詳しく把握
  • 本社に推進の功罪を含め解説・相談
  • 全体利益を優先した協議体制の構築

健全な協議体制の構築について過度に怖れることはありません。経営強化に活かすことも可能です。問題は一部社員の目先の利益だけを優先するような、不健全な協議体制が構築されることにありますので、ここに絞って対応策を考えればよいと思います。

(4)派遣利用のメリットが縮小化

従来は、派遣契約を利用することで(1)~(3)の課題が回避・抑制できましたが、このメリットが縮小化・限定化されつつあり、近い将来には無効化されると想定しています。

まずは、「派遣にしていれば大丈夫」という過信・盲信を捨てること、そして完全に無効化されてから慌てないよう、事前準備を進めることです。

【対策ポイント】

  • 派遣で低減可能なリスクを再分析
  • 自社雇用への切替の課題を把握
  • 段階的な自社雇用への切替を検討

なお、契約主体は自社に切り替えるとしても、事務代行や商業保険の利用など、派遣業者を別の形で活用することは考えられます。

以上、2008年の最後にあたっての総まとめとさせていただきます。一年間、お付き合いありがとうございました。

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